「まだ福島(市)に放射能はとんできているんですか?」こんな質問をされることが
度々あります。
いろいろなモニタリングのデータは公表されていて、私もその範囲でお答えをさせて
頂いていました。それでも皆さんにとって、その情報は見つけにくいですし、見ても
分かりにくいので、皆さんに少しでも分かりやすく説明できる様に福島県原子力セン
ター福島支所に行って、ちょっと調べてきました。そうです、福島市でも測定してい
るのです。
まず、空気中の放射性汚染物質の測定として、福島県は2種類の検査をしています。
ひとつは「定時降下物環境放射能測定」ともう一つが「ダストサンプリング測定」の
2種類です。これを聞いただけでよく分からなくなりますね。
「定時降下物環境放射能測定」(以下、定時降下物検査)は、降下物と言う言葉が表
す通り、空からどれだけの塵や土などが降ってくるか集めて、その集めたものに含ま
れる放射能を測定するものです。もっと凄い装置かと思って見学させてもらったら、
唖然、なんと円形と長方形のバットに水(純水)が張ってあるだけでした。(写真左
下)ロー・テクですが、測る目的からして確かにそれで十分ですよね。この円形の方
は1カ月間、長方形の方は24時間でそれぞれ集めてその水を煮詰めて余計な水分を蒸
発させてから、ゲルマニウム半導体検出器(写真右上。全部で10台位、壮観でし
た。)で計測、そしてその結果が「百万ベクレル/平方キロメートル」と言う単位で
発表されます。何とも単位が大げさなのですが、もっと簡単にすると「ベクレル/平
方メートル」、1平方メートル当たりに何ベクレルの放射性の降下物があったかと言
う事です。これが24時間と1カ月で測定されて発表されています。
そして「ダストサンプリング測定」。こちらは身近なもので言うと掃除機の様な装置
(写真右下)で空気を吸い込み、吸入口でろ紙を通して空気中のダストを付着させ、
そのろ紙に付着した放射能を同じくゲルマニウム半導体検出器で測定し、その結果が
1立方メートルあたりに何ベクレルの放射性核種があったかと言う「ベクレル/立方
メートル」の単位で表されます。計測は24時間単位で行われていて、24時間に吸引し
た空気の容積が同時に測られをこれを基に計算されます。装置は降下物は吸い込まな
い様に工夫されていて、あくまでも空気中に漂う塵等に含まれる放射性汚染物質を測
定しています。
なんとなくそれぞれ測っているものとその違いがイメージして頂けましたでしょう
か?
そこで、いちばん上の質問に戻ります。
本日、文部科学省のホームページで公表されている暫定の測定値は次の通りです。28
日午前9時〜29日午前9時の24時間の定時降下物検査が、放射性ヨウ素、放射性セシウ
ムともに「ND」の結果です。そして27日10時〜28日10時の24時間のダストサンプリン
グ検査が、セシウム137が「0.000405Bq/m3」測定されていますが、その他の核種は
「ND」となっています。この結果から言えることは、原因が何かは別として、空気中
にごく微量の放射性核種は「ある」と言う事です。ダストサンプリングの測定値はご
く低いながら検出される頻度がある程度高いのに対し、定期降下物では放射性核種が
ランダムに検出されています。25-26日の24時間では放射性セシウムが134/137併せて
「7.9MBq/km2」、12-13日には同じく併せて「71.4MBq/km2」測定されています。この
両日のダストサンプリングの値は大きな変化はありません。と言う事は、何が言える
のでしょうか?恐らく強風や雨と言った気象条件によって巻き上げられた砂ぼこり等
の影響の方が大きいという事です。(この2つの時間帯の気象条件を調べていないの
で申し訳ありません。)学校や公園の様に表土の改善がされているところでは恐らく
もっと少ないことでしょう。
事故発生時のダストサンプリングの公表されている値の条件がちょっと異なりますの
で、正確な比較にはならないかも知れませんが、公表されている値で事故後に高いの
が、3月20日18:30-18:50の「20分間」で、放射性ヨウ素、同セシウムを併せて「311.
2Bq/m3」です。それから比べると現状の値はごくごく少ないのも事実です。
恐らく、福島市で原発から飛んできていないと言ったらウソになるでしょう。でも、
この様に現状は事故当初と比較して空気中の放射能濃度はごくわずかで、むしろ前か
ら言われているように風の強い日には状況に応じてある程度気をつけた方がよいと言
う事です。本当はこれらの測定結果が皆さんにとって、もっと見やすく、そしてもっ
と早く公表されると良いのですが、残念ながら試料の前処理やゲルマニウム半導体検
出器での測定はある程度時間がかかるのでやむを得ない状況です。
さて、随分と長い書き込みになりました。お付き合い有難うございます。少しでも皆
さんのご理解に役立てば幸いです。
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